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RPA導入の目的と目標設定 ~成功事例に学ぶ自動化の進め方~

2024.11.06 水

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入は、業務効率の向上やコスト削減、人為的ミスの削減を目指す企業にとってなくてはならないものとなっています。

本記事では、そんなRPAを導入する際の目的と目標設定の重要性について解説し、成功事例を通じてその設定方法を紹介します。

また、目的と目標を明確にしない場合のリスクについても解説しますので、関係するスタッフの協力を得ながらスムーズRPA導入を実現させましょう。

 

RPA導入の目的と目標を決める

目的と目標の違い

「目的」と「目標」は、最終的に成し遂げたいこと、という意味で近しい言葉として使われますが、本稿では分けて考えます。

目的(Purpose)

目的は、活動やプロジェクトの最終的な意図や理由を示します。

少し抽象的な意味合いで使われることが多い言葉で、中・長期的な視野を持って、長期的なビジョンや価値観に基づいて決定するものです。

例: 「社会に貢献するために持続可能なビジネスを構築する」

 

目標(Goal)

目標は、目的を達成するための具体的で測定可能なステップのことで、具体的な期日と数値を使って表します。

短期的に達成できる目標を決めることで達成の基準とします。

例: 「1年以内に二酸化炭素排出量を20%削減する」

 

RPA導入の目的を決める

RPAは企業の業務を自動化するためのツールであり、その導入にあたり目的を決めます。

目的を明確にすることで、どの業務を自動化するべきか、そしてどのようなメリットを得られるかが決まります。

多くの企業がRPAを導入する目的は、業務効率の向上、コスト削減、そして人為的なミスの削減です。

特に繰り返しの多い単純作業を自動化することで、従業員のリソースをより重要な業務に活用できる点が大きな利点です。

 

では、どのようにRPA導入の目的を決めればよいのでしょう?

RPA導入の目的を決めるためには、以下の3ステップで考えていきましょう。

 

 

・ステップ1:現状分析(業務の棚卸)

現在の業務の流れを書き出して、どの部分が非効率であるか、どの業務が自動化の候補となるかを考えます。

そのうえで、ボトルネックと課題を洗い出し、改善が必要な範囲を決めていきます。

 

・ステップ2:関係者のヒアリング

経営陣、部門リーダー、現場スタッフなど、関係者からの意見を集め、業務を自動化する際の期待やリスクを把握します。

各部門のニーズや目標をつかみ、全体的なビジョンを共有します。

 

・ステップ3:リソースと制約

ステップ1と2をもとに、RPA導入に必要なリソース(人材、技術、予算など)を考えます。

同時に、技術的、法的、組織的な制約についても気を配っておくと、この後に続く目標設定に役立ちます。

RPAの導入目的は、先に挙げた通り、業務効率の向上、コスト削減、人為的なミスの削減に意識が向きがちですが、上記3ステップを踏んで考えてみると、他にも、顧客対応時間の削減や、俗人化している業務の標準化などさまざまなRPAの導入目的が見えてくるのではないでしょうか?

 

 

RPA導入の目標を決める

RPA導入の目的が見えてきたところで、目標についても考えていきましょう。

目標設定はフレームワーク「SMART」がわかりやすくてお勧めです。

「SMART」は以下の5つの単語の頭文字をとったものです。

 

 

・Specific(具体的): 目標を明確にし、誰が何をするのかを具体化します。

・Measurable(測定可能): 成果を測定するための指標を設定します。

・Achievable(達成可能): 現実的に達成可能な目標を設定します。

・Relevant(関連性): 目的に関連し、価値のある目標であることを確認します。

・Time-bound(期限付き): 目標達成の期限を設定します。

 

具体的な数値を設定することがポイントとなりますので、例えば「業務プロセスの効率化」を目的とした場合には、目標は「6ヶ月以内に、バックオフィス業務の処理時間を30%削減する」といった具合に決めていきます。

悪い例は「RPAをフル活用して、様々な業務を自動化する」などといったあいまいな表現にとどめてしまうことです。

 

 

RPA導入の目的と目標の具体例一覧

これまで見てきたRPA導入の目的と目標には、具体的にどのようなことが考えられるでしょう?

以下に具体的な例をまとめますので、見落としのないようにチェックしておきましょう。

 

目的(Purpose) 目標(Goal)
業務プロセスの効率化 6ヶ月以内に、バックオフィス業務の処理時間を30%削減する
コスト削減 1年以内に、業務プロセスAにおける人件費を20%削減する
エラーの削減とエラーチェック時間の削減 3ヶ月以内に、データ入力エラーを90%削減する

また、エラーチェックにかかっていた100時間/月を10時間/月にする

顧客サービスの向上 1年以内に、シンプルな顧客へのメール送信フローを自動化し、対応時間を50%短縮することで、顧客満足度を10%向上させる
従業員の生産性向上 8ヶ月以内に、従業員が繰り返し業務に割いている時間を30%削減し、その代わりにクリエイティブな業務に費やす時間を20%増加させる
データの可視化と分析の強化 3ヶ月以内に、データ分析レポート作成を自動化し、20時間/月かかっている報告書作成業務を5時間/月に短縮する。
業務の属人化を防ぐ 6ヶ月以内に、主要な業務プロセスの80%を標準化し、RPAで自動化する業務範囲を拡大する
コンプライアンスの強化 1年以内に、全ての取引データを集約し、権限設定を見直すことで従業員のデータアクセスを制限し、法令遵守を確実にする
業務の継続性の確保 3ヶ月以内に、重要な業務プロセスのバックアップをRPAで自動化し、ダウンタイムをゼロにする
知識の共有とナレッジマネジメントの強化 6ヶ月以内に、RPAを用いて業務マニュアルの確認・更新・全社員に共有を100%自動実行する

 

成功事例に学ぶRPA導入の目的と目標

では、実際の成功事例を二つ、ご紹介します。

成功事例①: 業務処理時間の短縮を目的とした導入

A社では、大量のデータ処理業務に多くの時間がかかっていたため、業務処理時間の短縮を目的にRPAを導入しました。

目的:定型業務の自動化による処理時間の短縮と新規事業の強化。

目標: 4か月以内に、毎月のデータ転記作業(20時間×6人分=120時間)を短縮し、1人分の人的リソースを確保し、新規事業の人員補強を行う。

 

導入初期から従業員に目的と目標を明確に共有し、抵抗感が少ない形で導入を進めました。

RPAは24時間稼働するため、夜間に自動で業務が進み、次の日の業務がスムーズに進行できるようになり、結果として業務効率が向上し、コスト削減も達成できました。

 

成功事例②: コスト削減を目的とした導入

B社の目的はシンプルに人的コストの削減でした。

この企業ではアルバイト3名を雇って、ブラウザからの情報収集、データのまとめ・入力・レポート作成を行っていました。

 

目的: 人件費の削減

目標: 1年以内に3名雇っているアルバイトを1名に減らす

 

目標達成のためにまず行ったのは、RPA導入時のコストメリットの算出です。

現状:アルバイト3名×時給1200円×100時間/月×12か月 = 年間432万円

 

RPA導入後

初年度                  RPAライセンス   年間60万円

RPAロボット開発 年間100万円

RPA保守運用 年間40万円

⇒初年度コスト合計:200万円

 

次年度以降           RPAライセンス   年間60万円

RPA保守運用 年間40万円

⇒次年度以降コスト合計:100万円

 

アルバイトを3名雇っている際には、年間で400万円以上がかかっていましたが、RPA導入でコスト削減に成功しています。

また、シフト調整や体調不良時・電車遅延等の緊急対応に時間がかかっていましたが、RPA導入の副次効果として、これらの管理コストも削減することができました。

 

 

RPA導入の目的と目標を明確にしない場合のリスク

 

これまで見てきたようにRPA導入にあたっては、全員が共有できる目的と具体的な目標が必要となります。

では、目的と目標が設定されていない場合にはどのようなリスクがあるのでしょう?以下に3つのリスクを挙げて考えてみます。

 

○導入に向けた結束の欠如

RPA導入の目的と目標が明確でない場合、組織内での協力体制が不十分になるリスクがあります。

関係する各部門やチームが異なる期待や理解を持つことで、協力体制が不十分になり、導入プロジェクトがスムーズに進まなくなることがあります。

RPA導入を進めるにあたっては旗振り役のリーダーシップが重要となりますが、そのリーダーシップ次第で信頼関係やモチベーションに大きな影響を与えます。

 

○従業員の抵抗

RPA導入によって業務がどのように変わるのか、のイメージが共有できていない場合に、従業員に「自分の役割がどのように変わるのか」「RPAが自分の仕事を奪うのではないか」といった漠然とした不安が広がってしまうことがあります。

複数の部署をまたいだ業務の自動化を行いたい場合に協力が得られない、といったことが起きないように情報の共有が必要です。

 

○導入効果測定が曖昧に

具体的な目標値が不明確な場合、RPA導入後の効果測定も曖昧になりがちです。

「4か月以内にデータ処理時間を30%削減する」「1年以内にエラー率を50%減らす」といった具体的な達成基準が設定されていないと、RPAを導入した結果が成功だったのか、まだまだ継続して改善を続けるのか、といった判断が難しくなってしまいます。

RPAの導入が一過性の取り組みで終わってしまうことのないように目標を定めておくことが大切です。

 

いかがでしたか?

目的と目標は決めるだけではなく、プロジェクト開始前に全員が共通の目的と目標を理解できるよう、ワークショップや説明会を開催して、メンバーに理解してもらうことが大切です。

一度話をしただけでは伝わらないこともありますので、定期的にコミュニケーションをとって目的と目標の理解を促す努力が必要となります。

 

 

まとめ

RPA導入においては、導入前に目的と目標を決めておくことが重要です。

目的は長期的なビジョンをもとに考え、目標は具体的な期日と効果を明記するようにしましょう。

また他社の成功事例をもとに、自社内の運用を考え、チームメンバーとの定期的なコミュニケーションの中で目的への理解、目標達成への協力が得られるように努力を重ねる必要があります。

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タクトシステムのRPA導入・開発・運用サポートや生成AIの運用を行うチームです。 RPAや生成AIに関する基本から活用の応用編まで、役に立つ情報を分かりやすく発信します。

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