RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、毎月・毎日繰り返すパソコン上の作業を自動化し、企業の業務効率をアップさせる重要なツール。
RPA導入時にツールを探してみると「クラウド型」と「デスクトップ型」という2つの形式があることに気づくことと思います。
それぞれに得意なこと、不得意なことがありますので、この記事では、両者の違いを解説し、導入時の選び方を詳しくご紹介します。
目次
クラウド型RPAとデスクトップ型RPAの基礎知識
RPAとは?基本の考え方と「型」の違い
RPAは、繰り返しヒトが行うパソコン上のシゴトを「ロボット」によって自動化します。
事務作業や調査、データ管理、ツール間の連携など、さまざまな業務で活用されています。
RPAの導入を検討すると、まずは「クラウド型RPA」と「デスクトップ型RPA」という2つの「型」を目にすることになると思います。
ここでいう「型」とは、
・RPAがどのように実行されるか?
・RPAがどこで動作するか?
を示しています。
この違いによって、管理方法や、コスト、スケーラビリティなどに違いが生まれてきますので、何が違うのかを理解したうえで、どちらを選ぶかを決めなければなりません。
では、「クラウド型RPA」と「デスクトップ型RPA」の違い、それぞれの得意なことと不得意なことを見てみましょう。
クラウド型RPAの得意なこと、不得意なこと
クラウド型RPAの特徴
クラウド型RPAは、インターネットを通じて実行され、クラウド上で動作します。
データやロボットはクラウド上で管理されるため、運用の手間が少なく、手軽に導入可能です。
- 管理方法
クラウド上で一元管理され、ベンダーが運用・保守を行います。
- スケーラビリティ
簡単にスケールアップが可能で、複数のユーザーやデバイスからアクセスできます。
- コスト
サブスクリプションモデルが多く、初期費用を低く抑えることができますが、継続的に月額費用が発生します。
クラウド型RPAが得意なこと
クラウド型RPAはその名の通り、クラウド上のデータやWebブラウザを介した作業の自動化に適しています。
例えば、ECサイトの運用で、オンライン注文の受け付け、在庫管理、配送処理などを自動化したり、顧客からの問い合わせや申し込みフォームの情報を自動で収集してCRMシステムに登録・更新することなどが得意です。
クラウドストレージを主に利用されている場合には、スムーズなアクセスとデータの取り扱いが実現できますし、また、スケーラビリティに優れていることから、複数人でデータにアクセスしたり、リモートワークで作業したりなどする場合にはクラウド型RPAのほうがコストメリットは高くなります。
クラウド型RPAが不得意なこと
その反面、クラウド型RPAはローカル環境でのファイル操作やデスクトップアプリケーションの自動化には向いていません。
例えば、特定のデスクトップアプリケーションを操作したり、ローカルファイルシステムでの複雑なファイル管理を行う、といったようなことは不得意です。
また、クラウド上でデータを処理することを考えると、機密性の高いデータやプライバシーに関わる情報を扱う場合には、セキュリティやプライバシーの視点で注意しましょう。
取り扱うデータによってはクラウドデータ保存不可、というケースがありますので、適切なセキュリティ対策を考えておかなければなりません。
デスクトップ型RPAの得意なこと、不得意なこと
デスクトップ型RPAの特徴
デスクトップ型RPAは、パソコンにインストールして利用するもので、デスクトップ環境で自動化タスクを実行します。
デスクトップ上のデータ管理とインターネットに接続した際のデータ管理の両面のデータの取り扱いに長けており、双方を利用して自動化したい場合にとても有用です。
- 管理方法
インストールしたパソコンで管理し、ユーザー自身が運用・保守を行います。
- スケーラビリティ
パソコンごとにRPAのソフトウェアをインストールが必要です。
複数人でデータを取り扱うことに危険が伴う場合には、インストールするパソコンを絞ってしまうほうが安全性は高くなります。
- コスト
特定のパソコンにソフトウェアをインストールするだけで利用できるため、初期導入費用が比較的低く抑えられます。
デスクトップ型RPAのライセンス形態には、1ライセンス1PCの固定ライセンスや、1ライセンスで複数台にインストール可能なフローティングライセンスなどさまざまな形式がありますので導入時に確認するようにしましょう。
デスクトップ型RPAが得意なこと
デスクトップ型RPAは、Webブラウザだけではできない自動化作業が得意分野となります。
Webブラウザで操作した内容を、デスクトップ上のExcelやWordで処理したり、オリジナルアプリにデータを転記したりなどに利用されることが多くあります。
また、Webブラウザを介してデータスクレイピングやオンラインフォームへの自動入力も可能で、ローカルとクラウドのリソースを活用したハイブリッドな業務プロセスの自動化を実現します。
デスクトップ型RPAが不得意なこと
デスクトップ型RPAは、個々のパソコン上で動作するため、大規模な業務プロセスの自動化は不得意です。
複数拠点で一度にデータを更新したい、というような場合にはスケーラビリティに優れたクラウド型RPAのほうが向いている場合もあります。
ただ、データ更新をそれほど急がず、例えば一日一回、夜間に更新すればよい、ということであればデスクトップ型RPAのバッチ処理で定期実行することも可能ですから、どのような作業を実行するのか?その作業は急ぐのか?どのくらいの頻度で実行するのか?を勘案することが大切です。
クラウド型とデスクトップ型、どう選ぶ?
クラウド型RPAとデスクトップ型RPAの比較一覧表
では、これまで見てきたクラウド型RPAとデスクトップ型RPAの特徴を一覧表にまとめます。
クラウド型RPA |
デスクトップ型RPA |
|
実行環境 | クラウド上で動作し、インターネットを通じてアクセス可能 | ローカルPCにインストールして動作 |
管理方法 | クラウド上で一元管理、ベンダーが運用・保守 | ユーザー自身がインストールしたPCで管理、運用・保守 |
スケーラ
ビリティ |
簡単にスケールアップ可能、複数ユーザーやデバイスからアクセス可能 | 各PCにソフトウェアをインストールする必要がある |
コスト | サブスクリプションモデルが多く、初期費用は低いが月額費用が発生 | ライセンス形態によりコストが変動 |
得意なこと | クラウドデータやWebブラウザを介した作業の自動化、スケーラビリティが高い | デスクトップアプリケーションやローカルファイルの操作、ハイブリッドな自動化 |
不得意なこと | ローカル環境でのファイル操作やデスクトップアプリの自動化、セキュリティ面の注意 | 大規模な業務プロセスの自動化、複数拠点での同時データ更新 |
セキュリティ | データの機密性やプライバシーに注意が必要 | ローカルでのデータ管理が可能で、セキュリティを高めやすい |
クラウド型・デスクトップ型のどちらを選ぶか迷った際の選定ポイント
一覧表にまとめた通り、自動化したい業務がクラウド上のデータやシステムに限られる場合はクラウド型、Webブラウザとローカル環境のデータを組み合わせて利用したい場合はデスクトップ型がオススメです。
また、以下の視点も組み合わせて考えてみるようにしましょう。
- 管理
クラウド型RPAはベンダーがツールを管理・運用してくれる一方、デスクトップ型はそれぞれのパソコン上でソフトを管理する必要があります。
- 作業領域
クラウド型RPAはオンライン上のデータに限られますが、デスクトップ型はブラウザ・デスクトップ両方のデータの取り扱いに長けて、汎用性が高くなります。
- スケーラビリティ
将来的な拡張性を考慮して、複数人でリモート作業が必要な場合はクラウド型が有利です。
作業環境を絞って安全性を高めたい場合にはデスクトップ型を選んだほうが良いケースもあります。
- コスト
初期投資や運用コスト、費用対効果も考えて、予算立てをしましょう。
RPA導入コストについて、詳しくは以下をご覧ください。
【比較表あり】RPAツールの特徴・費用を徹底解説!自社に最適なRPAの選び方
クラウド型、デスクトップ型のどちらも一長一短があると捉え、どのような作業を自動化したいかから考え、どちらの「型」を選ぶか判断することが大切です。
ケース別選び方ガイド
- リモートワークが多い場合は、クラウド型RPA
クラウド型RPAはインターネット環境があればどこからでもアクセス可能。リモートワークが多い企業では、スタッフが自宅やオフィス外からでも同じRPAを操作できるので、業務の一貫性を保ちながら効率的に作業を進めることができます。
- リモート環境でのセキュリティが懸念される場合は、デスクトップ型RPA
機密性の高いデータをクラウド環境に保存したくない、というような場合にはデスクトップ型RPAに軍配が上がります。
デスクトップ型はリアルタイムなデータ更新には不向きな場合もありますが、確実なデータ更新ということであれば、クラウド型・デスクトップ型のどちらを選んでも問題ありません。
- コストを抑えて迅速にRPA導入したい場合は、クラウド型RPA
まずはRPAでどういったことができるか試してみたい、こういった作業であれば自動化できることを社内共有したい、という場合にはインストール不要のクラウド型RPAがオススメとなります。
スモールスタートしたい、という場合にはクラウド型RPAから進めて、より多くの業務を自動化したいというタイミングでデスクトップ型に切り替える、という考え方もあります。
- ローカル環境での動作が必須なら、デスクトップ型RPA
自動化したい業務に、ローカル環境のExcelファイルや、自社固有の顧客管理システム・会計システムなどがある場合にはデスクトップ型RPAのほうがオススメです。
デスクトップ環境でしかできない作業が残っている、という場合にはクラウド型RPAでは対応できない領域があります。
まとめ
クラウド型RPAとデスクトップ型RPAは、それぞれに得手、不得手があります。
クラウド型はリモートワークや柔軟な運用を求める業務に適しており、一方、デスクトップ型はセキュリティが必要な業務やカスタマイズ性が求められる業務で活躍します。
どちらのほうがより優れているということではなく、必要に応じて使い分ける必要がありますので、本記事で挙げたケースも参考にしてもらいながら適切なツール選びを進めましょう。
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