RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型業務を自動化するツールとして多くの企業で導入が進んでいます。
本記事では、RPAと従来のITシステムの違いを解説し、外部発注を前提としていた従来のITシステムとは異なる、RPAの内製化のメリット・デメリットについて詳しく考えていきます。
RPAの概要と従来のITシステムとの違い
RPAとは?
RPAは、定型業務を自動化するツール。
従来のITシステムが業務全体を対象にさまざまなデータをシステム化するのに対し、RPAはPC上の操作を自動化します。
例えば、データ入力や集計作業、Webサイトのチェックなど、繰り返し行う作業を自動化することができます。RPA導入により、手作業のミスを減らし、業務プロセスの正確さを向上させ、業務効率を向上させることが可能です。
また、RPAはノーコードで自動化を実現できるため、内製化が容易といわれているところも特徴の一つです。
内製化により、外部ベンダーに依存せず、迅速な対応やコスト削減が可能といわれています。
従来のITシステムとRPAとの違い
従来のITシステムは、業務全体を対象にして設計されることが一般的でした。
具体的には、大掛かりなシステム開発プロジェクトを通じて、ERP(Enterprise Resources Planning)システムやCRM(Customer Relationship Management)システムなどといった企業の基幹業務を包括的にサポートするソフトウェアを導入・開発が進められていました。
これらのシステムは、社内業務全体を管理し、データの統合と共有を大幅に促進する一方で、導入には多大な時間とコストがかかるという課題がありました。
一方、RPAは特定の業務プロセスや作業に焦点を当てて自動化を実現します。
そのため、下記の3つの点が従来のITシステムとは異なります。
短期導入・コスト抑制
RPAは特定の業務プロセスや作業に焦点を当てて自動化を実現します。
そのため、業務範囲を定めたうえで、短期間で導入が可能で、コストを抑えることも可能です。またノーコードで業務フローの自動化を実現できる点から、社内リソースの確保ができるなら内製化も可能です。
高いカスタマイズ力
従来のITシステムは、導入後のカスタマイズや変更が難しく、システム全体の見直しが必要となりましたが、RPAはちょっとした業務フローの変更に対応しやすいといったメリットがあります。
既存システムとの柔軟な連携
RPAは既存のシステムと連携・協力して動かすため、業務フローの変更時にシステム全体の改修を考える必要がありません。
また、既存システムに変更があった際にもRPAの手順を修正するだけで、これまで通りの動きを実現することができます。
RPAと従来のITシステムの連携
RPAは業務フローを自動化
RPAは、さまざまな業務フローを自動化できます。
例えば、手作業で行っていた請求書の処理やデータの転記作業、報告書の作成など、定型的な業務を自動化することで、時間とコストを削減できます。
また、複数のアプリケーション間のデータ連携も容易に行えるため、手作業のミスを軽減し、既存ITシステムでは手が届かなかった自動化を受け持つこともできます。
具体的には、営業部門での顧客データ管理やフォローアップの自動化、経理部門での支払い処理の自動化など、多くの業務で活用されています。
既存のITシステムだけではまかないきれない細かな業務や、システムにデータを連携させるための単純作業から解放されることで、社員はより重要で、クリエイティブな仕事に集中できるようになります。
また、RPAロボットは365日・24時間休みなく働けるので、夜間や休日でも業務を進行させ、さらなる効率化が期待できます。
ERPなどのパッケージシステムやクラウドサービスとの連携
RPAは、ERPやクラウドサービスなどと連携することで、より高度な業務の自動化が可能です。
例えば、ERPシステムで設計当初には想定されていなかった受注処理や在庫管理を、RPAを連携させることで自動化し、業務効率化が図れます。
複数のクラウドサービスを利用している場合、データ連携にはAPIが一般的に使われますが、API連携できない箇所やクラウドシステムとオンプレのシステムと連携させる場合などは、RPAによって解決する方法も有効です。
RPA導入にあたって
導入事例と成功ポイント
RPAの導入事例は多岐にわたります。例えば金融業界では、口座開設の手続きを自動化し、顧客対応のスピードを向上させています。
製造業では、部品の在庫管理の自動化・効率化を実現しています。
成功ポイントは、業務の詳細な分析と、適切なツールの選定。
先に述べたように、RPAは特定の業務プロセスや作業に焦点を当てるため、まずはどういった業務があり、その中で自動化対象はどれなのかをキチンと分析する必要があります。
また、自動化したい業務に最適なツールを選ぶためには、複数のRPAツールを比較することが大切です。
さらに、RPAの導入前に、費用対効果の算出が必要です。
RPA導入に際しての初期費用、ライセンス費、運用コストなどの投資に対して、どれくらいの効果を生むのかを事前に把握しておくことはとても大切です。
具体的には導入によって削減できる人件費や、業務効率の向上による利益増加を算出して、投資回収期間やROI(投資利益率)を見積もります。
これは、導入にあたっての妥当性を会社に説明して承認を得やすくすると同時に、導入後の効果測定にも役立ちます。
成功したかどうかの判断ポイントを、導入前に決めておくことがRPA導入成功の大きなポイントとなります。
従来のITシステム導入でも費用対効果の算出はもちろん大切なことでしたが、業務範囲を絞り込むRPAでは算出が容易であるために、より重要度が増しているといえます。
RPA導入における課題と解決策
RPAの導入には、いくつかの課題が存在します。例えば、業務の複雑さに応じて適切なRPAツールを選定し、適切なロボットを作成することが挙げられます。
また、RPAの稼働環境を整備し、システムの安定稼働を確保することも重要です。
従来のITシステムと違い、RPAはノーコードだから誰でもできる、と思われがちですが、ロボット作成のリソースを割くことが難しい場合などには専門家のサポートを受けながら、段階的に導入を進めることも検討が必要です。
RPA導入におけるもう一つの課題は、現場での運用体制の確立です。
導入後の運用ルールを明確にし、定期的なメンテナンスを行うことで、安定した運用が可能となります。
また、RPAの誤作動や設定ミスを防ぐために、運用前にテストを行うことも重要です。
RPAロボットを作ったけれど、うまく動かないことや、止まってしまうことがあると、導入効果が薄れてしまいます。
従来のITシステムはベンダーへの外部発注を前提としていましたが、RPAは自社でロボットの作成から運用までできるように考えられることが多くありますが、実際には、上記のような課題を事前に把握したうえで、RPA導入時には、「内製化するかどうか?」を決めなくてはなりません。
内製化はメリットが大きい分、人的リソースの確保・トレーニング期間など負担も大きくなりますので、詳しく見ていきましょう。
RPAの内製化とそのポイント
RPAの内製化のメリットとデメリット
RPAの内製化には多くのメリットと、その反面デメリットもあります。
双方をキチンと理解したうえで、内製化に踏み切るかどうかを判断する必要があります。
RPA内製化のメリット
- 柔軟な対応
RPAを内製化することで、社内での柔軟な対応が可能となります。 例えば、業務の変更に迅速に対応できるため、新たな業務フローの自動化もスムーズに進められます。 - コスト削減
外部ベンダーへの支払いを減らし、コスト削減につながります。 - 社内のスキル向上
RPAの内製化によって、社員がツールの使い方や自動化の手法・工程を学ぶことができますので、チームの技術力と業務自動化の意識が向上します。
RPA内製化のデメリット
- 初期投資とリソースの確保
内製化には初期投資が必要であり、RPAツールの導入のほかに、社員のトレーニングにコストがかかります。また、RPAロボットを作成するための人的リソースの確保が必要となります。 - 専門知識の必要性
RPAの内製化には専門的な知識が求められます。社員がRPAツールを効果的に使うには、継続的な教育とトレーニングが必要となり、その時間の確保も重要です。 - 運用と保守の負担
内製化したRPAの運用と保守は社内で行う必要があります。特に、RPAロボットが止まってしまった場合や、業務フローの変更があった際に迅速な対応が求められます。
内製化の手順とポイント
RPAの内製化を進めるためには、以下の手順がポイントとなります。
内製化を進めるべきかどうかを判断するポイントともなりますので、メリット・デメリットとともに、手順についても把握しておくことが重要です。
- 業務プロセスの分析
社内の業務プロセスを詳細に分析し、自動化の対象となる業務を特定します。 - RPAツールの選定
適切なRPAツールを選定し、実際の運用に向けた準備を行います。 - 運用開始と改善
運用開始後は、定期的な見直しと改善を繰り返し、作成したRPAロボットは定期的にメンテナンスします。 - 専門スタッフの選定
RPAの専門スタッフを選定します。このスタッフがチームや企業の中心となって、自動化の進捗状況を管理し、問題が発生した際の対応策を講じます。また先に挙げた費用対効果の算出やRPA導入後の目標進捗管理を行います。 - 教育とトレーニング
内製化に伴い、RPAに関する社内教育やトレーニングを実施することで、社員全体の理解を深め、スムーズな運用をサポートします。
RPA内製化のリスクと対応策
RPAの内製化には、上述したようにメリット・デメリットの両面があり、手順の注意点もあるため、いくつかのリスクが伴います。
例えば、社内のリソース不足やスキル不足はその代表的なものといえるでしょう。RPAの効果があらわれるまでに時間がかかることから、こうした状況では外部の専門サポートを受けることを検討する必要があります。
また、段階的な導入、定期的な見直しと改善を行うことで、運用の安定性を確保するという考えがある一方で、迅速な対応が求められるケースへの対応も考えておくようにしましょう。
まとめ
これまで見てきたように、RPAと従来のITシステムにはさまざまな違いがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
お互いの良さを組み合わせることで、従来のITシステムとRPAが連携され、企業全体の業務効率のさらに向上が見込めるでしょう。
また、従来のITシステムと違い、RPAの内製化には、リソースの確保や専門知識の習得が求められます。
RPAの導入を検討する際には、業務プロセスの詳細な分析と適切なツールの選定、そして内製化のメリット・デメリットを十分に理解した上で、最適な導入方法を選ぶことが重要です。
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