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RPA導入の効果はどう測る?「数値化」でわかる成功と失敗の分岐点

2024.10.23 水

RPA(Robotic Process Automation)の導入は、パソコン上で行う定型の繰り返し作業を自動化して、業務効率化を飛躍的に推し進める手法です。

RPA導入により、人件費削減やヒューマンエラーの防止、業務のスピードアップが期待されますが、効果を数値化し、費用対効果を正しく算出することが成功の鍵となります。

本記事では、RPA導入の成功と失敗を分けるポイントを、具体的な事例や数値化の手法を交えて解説し、高い費用対効果を出す導入方法を詳しく解説します。

 

1. RPA導入の効果測定の重要性

RPA導入の目的と期待される効果

RPAは、毎日の繰り返し作業を自動化して、仕事の正確性をアップし、働く時間を減らし、生産性を上げるツール。

企業がRPA導入に期待する主な目的は以下の3つに集約されます。

  • 人件費の削減
  • 業務効率化
  • ミスの削減

RPAは、365日24時間稼働し続けることができますので、作業時間の短縮に加え、コスト削減、従業員のストレス軽減、エンゲージメント向上を図ることが可能です。

RPA導入を検討する際には、まず目的を明確にし、それに基づく具体的な成果を数値化することが求められます。

導入前に数値を明確にしておくことで、導入後の成果が測りやすくなり、成功や失敗を判断するための指標となります。

 

効果測定で押さえるべきポイント

RPA導入の効果測定は、『定量的な指標』で行うことが基本となります。

これまで手作業で行っていた時の処理時間とRPA導入後の処理時間の差分を出し、短縮された時間がどの程度であったのか?を数値化します。

また、ヒューマンエラーの削減効果もあわせて測定することで、RPA導入による業務プロセス全体の改善度を数字で把握します。

 

例えば、ある企業が手作業で顧客データを転記し、入力内容を確認し、間違いがあれば直すという業務に1件あたり平均5分かかっていたとします。

RPAを導入することで、1件あたり1分に短縮されたとすると、1件あたり処理が4分間短縮されたことになります。

月に2000件の顧客データを転記していた場合、

2000件×4分 = 8000分 ≒ 133時間

が短縮されたという形で、効果を数値化することができます。

 

また、数値化することはできませんが『定性的な効果』にも視点をあわせておくことも大切です。

RPA導入には、従業員が単純な繰り返しの作業、ミスのチェックといった生産性の低い業務から解放され、クリエイティブワークに集中できるようになるという間接的な効果もあります。

先に解説した『定量的な指標』のほうが分かりやすく効果を実感することができますが、従業員のモチベーション向上や、業務の質の向上といった『定性的な効果』もあわせて考慮しておきましょう。

 

 

2. RPA導入の成功と失敗を分ける「数値化」の手法

数値化するための定量的な測定方法

RPA導入による効果を定量的に測定するための具体例を見てみましょう。

従業員が手作業で行っていた作業をRPAに置き換え、処理時間を短縮し、コスト削減を達成したとします。

このとき、費用対効果(ROI: Return On Investment)を測定するために、以下の計算式を使います。

 

費用対効果の計算式(概要)

この式では、導入後の効果は、RPAを導入したことによって削減された作業時間に時間当たりの人件費を掛けたもので、導入コストは、RPAツールの購入費用、初期設定費用、教育・研修コストを含みます。

そのため、もっと細かく書き直すと以下のようになります。

 

費用対効果の計算式(詳細)

では、この式をもとに、成功事例、失敗事例をそれぞれご紹介します。

 

具体例1:成功事例

さきほど挙げた例で、手作業で一か月に2000件の顧客データを転記している企業を考えてみます。

RPA導入コストの合計を200万円とした場合、以下のように計算することができます。

 

≪導入コスト≫

  • RPAツールライセンス費用:年間100万円
  • 初期費用:一式30万円
  • ロボット開発・教育にかかる人件費:年間50万円
  • 運用にかかる人件費:年間20万円

導入コストの合計: 200万円

 

≪導入後の業務削減効果≫

  • 削減された業務:顧客データを転記、チェック、不備修正×1か月あたり2000件
  • 手作業をしていた時の作業時間:1件あたり5分
  • RPA導入後の作業時間:1件あたり1分
  • RPA導入により削減された時間:4分×1か月あたり2000件=8000分(≒133時間)
  • 1時間あたりの人件費:3000円

導入後の業務削減効果:133時間×12か月×3000円=約478万円

 

この場合、初年度のROIは次のように計算されます。

この場合、ROIが139%という結果になり、きちんとした費用対効果が得られたことがわかります。

導入コストに対して1.3倍の効果があったと言い換えることができます。

このような結果を達成した場合、RPA導入は「成功」と評価されます。

 

また、今回は初年度の費用で計算したので、初期費用やロボット開発の費用を入れていますが、2年目以降はこのような費用はかかりませんので、より高い費用対効果を出すことができます。

 

 

具体例2:失敗事例

一方で、期待したほどの効果が出なかったケースも考えてみましょう。

先ほどの例を一部変更して、ロボット開発・教育に想定以上の費用がかかってしまい、また、ロボットを作った後にエラーが多発して、運用の人件費も多くかかってしまったとします。

 

導入コスト≫

  • RPAツールライセンス費用:年間100万円
  • 初期費用:一式30万円
  • ロボット開発・教育にかかる人件費:年間120万円
  • 運用にかかる人件費:年間100万円

導入コストの合計: 350万円

 

作ったロボットにエラーが多発する場合、RPA導入後の作業時間が思ったほどは削減されませんので、「RPA導入後の作業時間」を変更します。

 

≪導入後の業務削減効果≫

  • 削減された業務:顧客データを転記、チェック、不備修正×1か月あたり2000件
  • 手作業をしていた時の作業時間:1件あたり5分
  • RPA導入後の作業時間:1件あたり3分
  • RPA導入により削減された時間:2分×1か月あたり2000件=4000分(≒66時間)
  • 1時間あたりの人件費:3000円

導入後の業務削減効果:66時間×12か月×3000円=約237万円

 

さきほどと同じように、初年度のROIを計算してみましょう。

この場合、ROIはマイナスとなり、RPA導入は「失敗」と評価されます。

投資した費用に対して、利益が少なく、損失が発生しているといえます。

 

このように、費用対効果の数値化は、成功か失敗かを判断するための重要な指標となります。

RPA導入に成功した企業では、効果的な業務選定と運用の最適化が行われていることが多く、逆に失敗する企業では、RPA化する業務が適切ではなかったり、ロボット開発や運用の人件費が高すぎたりすることが多く、RPA導入の失敗の要因となっています。

 

 

3.成功事例と失敗事例から学ぶ効果的なRPA導入の準備

費用対効果という視点から成功事例と失敗事例を見ることで、算出方法と成功と失敗の分岐点をご理解いただけたのではないでしょうか。

この項ではさらに深堀して、RPA導入に成功している企業と失敗している企業のそれぞれのポイントを解説します。

 

成功事例から学ぶポイント

RPA導入に成功している企業では、以下の3つがポイントとなっています。

 

1.明確な目標設定

RPA導入に成功している企業では、導入前に目標を明確に設定しています。

例えば、業務効率化やミスの削減といったぼんやりとしたものではなく、先に示したような「RPA導入後の業務削減効果」を数値化して、具体的な目標を掲げ、それに基づくKPIを設定しています。これにより、導入後の効果を数値で測定することができ、成功の判断がしやすくなります。

 

2.適切な業務選定

「RPA導入後の業務削減効果」をRPA導入前に想定するためには、適切な業務選定が必要です。

  • RPA導入前の手作業はどれくらいの時間がかかっているのか?
  • RPA導入後に自動化した際には、どれくらいの作業時間になるのか?
  • その差はどれくらいか?
  • 作業者の人件費をどのように算出するか?

といった視点で、自動化する業務を選定していくことで、RPA導入の効果を最大化することができます。

 

3.RPA化する業務の優先順位

小規模なプロジェクトから始め、成功を確認した後にスケールアップするアプローチがRPAの導入の一般的な進め方となりますが、あまり小さな成功では、費用対効果があらわれません。

RPA導入前に想定されるROIから、どのプロジェクトを先に進めるかを判断し、RPA導入に関わる従業員がきちんと効果を実感できるように優先順位を明確にすることが必要です。

 

 

失敗事例から学ぶポイント

RPA導入に成功している企業の裏返しになりますが、失敗している企業のポイントを以下にまとめます。

 

1.過度な期待と不適切な業務選定

RPAは導入しただけで効果が出るわけではなく、適切な業務選定・ロボット作成・運用が必要となります。

例えば、頻繁に変更がある業務や、例外処理が多い業務はRPAに向いていません。これらの業務を選定してしまうと、RPA導入後のロボット作成に想定以上の人件費がかかり、また多くの手直し(運用コスト)が必要となり、費用対効果が低くなってしまいます。

 

2.不十分な準備と教育

RPA導入に際して、従業員への教育が不十分な場合、導入後にトラブルが発生しやすくなります。

最初に、RPA導入の目的を従業員と話し合い、「なぜRPA導入を進めるのか?」を正しく理解してもらうようにしましょう。

従業員がRPA導入の目的を理解していない場合、自分の仕事が奪われるのではないかという不安や抵抗感が生まれる可能性が高くなります。

 

3.費用対効果の過小評価

「導入コスト」や「運用コスト」をいい加減に見積もると、費用対効果が低くなってしまうケースがあります。

導入前に細かく導入コストの分析を行い、導入後の効果も想定したうえで、費用対効果を正しく想定しておくことが必要となります。

 

 

効果的なRPA導入の準備

これまで見てきたようにRPA導入の費用対効果を最大化するには、以下の4つがポイントとなります。

  • 導入目的を明確にする
  • 適切な業務を選定する
  • 段階的な成功体験を積む
  • 従業員の理解を得る

この4点を踏まえて費用対効果を予測し、RPA導入を進めることが「成功」への近道となります。

一度、「失敗」という評価を得てしまうとなかなか覆すことが難しくなってしまいますので、どのように計画するかが焦点となります。


RPA導入前の費用対効果想定は、RPAツール提供会社では難しいことがありますので、専門のコンサルタントや導入支援会社に相談することをお勧めしています。

ハカドリRPAでは、「費用対効果を見据えたRPA導入」をご提案しておりますので、お気軽にご相談ください。

https://www.tactsystem.co.jp/hakadori/rpa/


 

まとめ

RPAは導入したから成功、自動化できたから成功というわけではありません。

業務効率化や人件費削減、ヒューマンエラーの防止といった効果が期待されますが、その成功か、失敗かを判断する材料は費用対効果です。

「導入コスト」「導入後の業務削減効果」を数値化することで費用対効果(ROI)を計算することができますので、ぜひ導入前に算出しておくようにしましょう。

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  • この記事を書いた人
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タクトシステムのRPA導入・開発・運用サポートや生成AIの運用を行うチームです。 RPAや生成AIに関する基本から活用の応用編まで、役に立つ情報を分かりやすく発信します。

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