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企業ロゴ・ブランドロゴ選考基準のポイント【第1回】

2020.04.17 金

企業ロゴ・ブランドロゴ選考基準のポイント【第1回】

こんにちは!コロナで大変なタケっちです。皆様も容易ではないと存じます。

前回、「令和2年。2月22日は皆さまにとって良い日であることを祈っておきます(2月17日現在)」 …だったのですがオリンピックは延期され、世界中大変なことになっています。都心から人がいなくなり、社会の様相がみるみる大きく変わっている最中です。

世界の経済構造どころか、人々の価値観が根底から変化するかもしれません。リモート・テレワーク環境などは、なかなか肯定されず進まなかったのですが、国から性急に助成がなされたことを背景に一気に一般化するかもしれません。何はともあれ良い方に転んでほしいと思います。

ところで20年も昔、“インターネットは若者のツール”などと言われていました。“SNSは若者のツール”も結構久しいはず。

でも今の若者自ら発言しているのをたびたび目にします。SNSで積極的に遊ぶ割合が多い年齢層やデジタルネイティブを指しているのかもしれません。しかしSNSは最初っから企業がマーケティングに活用してきました。

私は今や老眼のオッサンであるどころか同級生には孫がいたりします。もう言い切りますが、通信インフラとデバイスが高度化した現代、デジタルコミュニケーションは全ての現役世代が関連サービスを利用し、広く定着しています。

そのネット上では世代間や年齢層、立場や価値観の違いによるディスり合いが先鋭化する一方です。マーケティング調査は市場を属性ごとに分類しビジネスの方針を案じます。

大まかに市場を把握しビジネスに生かすためです。しかしその人々を十把一絡げにした文字の集合を根拠に、個人が他者の性向まで知ったように断ずることなど到底できません。

個々を取り巻く環境、経験・体験してきた事、思い・価値観はそれぞれ全然違うので、ただの色眼鏡になります。この騒動がひとまず収束する頃、今度は不毛なディスり合いが自粛されている、そんな契機にもなってほしいと願います。

 

コーポレートアイデンティティを体現した企業ロゴ。提案されたデザイン案から最善の案を選出するポイント

さて今回は企業ロゴを選ぶポイントをテーマにしたいと思います。今回はその1回目です。

前回、以下の「2:永続性」について、“長期にわたり飽きない。馴染み愛着になる”としていましたが、正しくは“企業コンセプトの本質、プロポジションを表現している”の間違いです。訂正してお詫び致します。

コーポレートアイデンティティを体現した企業ロゴ。提案されたデザイン案から最善の案を選出するポイント

経営トップと顧客、また経営層と従業員とではロゴを評価するポイントが異なる。

CIにおけるVI開発で、当方が若い頃「クライアントの経営層はA案を選んだが、デザイン担当であり一般消費者でもある自分としては、B案の方が新鮮で良いと思うんだよなぁ」というようなケースによく直面しました。昔はジレンマを感じたものでしたが、今は本当にB案がクライアント様に有益でA案は推奨できないと考えられる場合、A案は基本的に提案致しません。また似たようなケースで、役員・経営層の評価と従業員との評価がA案とB案にきれいに2分されるケースもあります。
これらは単なる好みと捉えられがちですが、そもそも役員・経営トップともう一方、この2者においてロゴを評価する基準が異なるからと言えます。

経営トップにとって企業ロゴは「保証と結束の象徴」です。ステークホルダーに自社事業についての信頼を保証し、インナーとはアイデンティティを共有し未来に向けて結束する旗印です。
一方顧客や消費者・ユーザーにとっては、その企業やブランドとの間にある「共感の印」です。結びつきが深まるに従い、事業内容やブランドのフィロソフィーに共感し、そのロゴに対する親しみも深まっていきます。

この評価基準に関する認識の違いを理解し、選考方針をメンバー間で共有するため、ロゴが重点的・優先的に満たすべき要件を決めて選考する手立てとします。それにより個人的な好き嫌いではない、客観的な判断が可能になります。特に多くの方々が関わる企業ロゴの選考では、各人の立場や感情も入り交った様々な感想が噴出します。その状況を受け止め整理する必要に迫られますが、その際の物差しとして選考基準を設けることが役立つものと思います。

 

オーナーにおける企業ロゴ

 

顧客・消費者における企業ロゴ

 

 

比較的、経営トップ・オーナー視点からの基準。

1:独自性

競合他社や著名企業と類似せず、すぐに識別できる

経営トップ・オーナーにとっては著名な何かに類似していると、率直な感情として嫌なものです。商標登録することが念頭にある場合、既に登録されている商標に類似し法的に違反するものとされる懸念もあります。そのため商標登録する場合、最終選考に残った案は弁理士に調査を依頼します。

 

企業ロゴ

 

顧客にとっては著名企業、特に競合他社と容易に識別できることが要件になります。識別において混乱を生じるようだと、PRをはじめ広告・宣伝など各コ  ミュニケーション施策の効果が上がりません。それらに掛かったコストが無駄になってしまいます。

今の消費者は類似していても「あのブランドロゴっぽくて、オシャレだね。」と割と肯定的に受け入れます。むしろ“…っぽい”っていう方が手っ取り早くオ  シャレと捉えます。そのためマーケティング戦略として“あのブランドロゴのような感じで…”ということはありえます。既に世間に浸透しているロゴデザインのありがちなパターン、既視感も公のブランド資産と考え、戦略的に活かせるのであればそれも近道かもしれません。

ただしその場合、雰囲気の方向性が近いことは容認しても、形が混同されるようであれば決定的に識別できなくなるので問答無用でNGです。商標調査で通らない懸念も生じます。また形が全く異なり商標的にも問題ないとしても、雰囲気が近いと消費者では識別できず混同するリスクが伴います。

昔はパクっていない完全なオリジナル、たとえデザイン的に優れていると自認していても、内部スクリーニングで「あのロゴの感じに似てるんだよね~」の一言が出た時点で一発アウト。提案すら至りませんでした。

ロゴデザインはパターンが出尽くしている中、完全なオリジナルを求められ、そのため徹夜になってもアイデアを絞り出さなきゃならんという、まさに神が降りてくるのをしつこく待つという感じでした。徹夜明けの「あのロゴっぽい」という簡単な一言は、それまでの苦行があっけなく無に帰してしまう、恐怖の一言でした。

 

2:永続性

コーポレートアイデンティティの本質を表現している

企業は永続的に存在する事を前提にしています。そして企業ロゴはその企業が存続する限り、中長期に渡って使用されます。その企業の永続的なコンセプトはコーポレートアイデンティティであり、その中でもブランドプロポジションなど最も本質的なコンセプトが該当します。「我々は何者か」をひとことで言い表す本質が、しっかり企業ロゴに表現されているかどうか。これは経営トップにとって最も重要な事でしょう。

コーポレートアイデンティティにおける企業ロゴのデザイン開発では、ブランドプロポジションなど企業コンセプトの本質、企業理念やビジョンにある“意味”の本質をロゴデザインに凝縮します。デザイン開発では派生的な形を削ぎ落しながら、より“意味”のエッジを際立たせていきます。

そして運用においては、中長期にわたり一貫したルールをもってロゴを表示し続けることがコーポレートブランドの創造につながります。VIシステム全体は随時改善・修正を図ることが大切ですが、VIシステムの核である企業ロゴ(基本要素)はそう頻繁に変更することはできません。

ただしそれまで顧客や社会に培ってきたロゴの印象を継承しながら、大きくリファインすることもできます。その事例ではBRIDGESTONEがあります。ロゴがリファインされた直後、大きく変わったことに気づいた方はどれくらいいたでしょうか?人から言われたり、コーポレートPRなどを通してからようやく気づきませんでしたか?

あれ、デザイナーにとっては全く違うデザインです。機会があったらシンボルマークとしても展開する頭文字のBマーク、その赤い三角形に注目してください。何かに気づくと思います。

 

3:汎用性・展開性

アイテムでの扱いやすさ、デザインシステムでの展開のしやすさ

ロゴはシグネチュア、つまりは「ハンコ」として使われる他、ステーショナリーやパンフレットなどアイテムを制作する際、デザインを構成するグラフィック要素として使われたりします。背景に使用されたり、キービジュアルとして展開されたり。他のデザイン要素と組み合わされるパターンもあります。

ロゴのアイデンティー

 

シンボルロゴか、テキストロゴか

ところで当方ではロゴを2タイプに分けています。シンボルマークに意味を凝縮した「シンボルロゴ」と、文字をベースにデザインした「テキストロゴ」。そしてこれら2つのタイプの発展・派生型が数種あり、それぞれ特長や優位性があります。

当然、ロゴの表示のされ方やアイテムデザインへの展開に大きく関わります。いずれ取り上げたいと思います。展開アイテムでのロゴの扱いやすさやデザイン展開性は、シンボルロゴとテキストロゴ、これらロゴの型式に大きく左右されます。

シンボルロゴはシンボルマークに意味を凝縮します。そのため多くは存在感が強いデザインになります。また浸透すると記号として記憶され、遠距離からでも一発で識別されます。これらの強みから看板が店舗の目印になっている金融機関、また象徴として強く存在感を表現したい乗用車ブランド等でシンボルロゴが多い理由だと思います。

一方、その存在感の強さが製品デザインに干渉し扱いにくくなる事があります。家電ブランドにテキストロゴが多いのはその理由もあるでしょう。テキストロゴは象徴性や存在感が強くないため、アイテムやプロダクトデザインにおいては扱いやすいのです。

印象に残らないロゴなのに、展開アイテム全体を見ると良い

アイテム展開では例えば『製品はクラウドサービスで、WEB広告などWEBメディア中心にコミュニケーションを展開する』このような場合、エンドユーザーが接するメディアは極端にWEBサイト・ブラウザに偏ります。

その場合はWEBサイト・ブラウザ上での展開性が最優先です。またロゴ単体としては印象が残らないが、アイテム展開性が優れており、アイテム全体を俯瞰するとカッコいいケースもあります。

 

客観的に選考し最終的に経営判断。

長くなりますので今回は一旦、ここまでにしたいと思います。続きは次回で。

この選考基準ですが、実際の提案では参考程度に留まります。客観的に選考する意識づけまでサラッと出してあまり深掘りしません。クライアントさんによっては「ああ、そういえばこんなことも提示されてたな~」という感じでしょう。企業ロゴの選考では客観的に考えた上で、最終的には経営判断です。このサラッと提示する背景には企業ロゴ、ブランドロゴもそうですが、そのデザイン開発内部では多方面から検討を重ねており、そうそう簡単なことではないという事があります。

コロナの一次収束後、「経済構造はどう変わるのか」「人々の価値観はどうなるのか」教えてくれる人がいたら、ぜひお気軽にご連絡を。
タケっち的には内需重視の動きが大きくなり経済を回すようになる気がします。関連して自ら“ガラパゴス”と言ってきた様々なもの、価値を見直されるといいですね。

 

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