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企業ロゴ・ブランドロゴ選考基準のポイント【第3回】

2020.06.30 火

企業ロゴ・ブランドロゴ選考基準のポイント【第3回】

こんにちは!まだ世界がコロナ禍にある中、自粛は完全に解除されました。都内は人も増え元の様子に戻りつつあります。しかし2波も想定され、リモートによる業務形態をこのまま常態化させていく企業も中にはあります。
新型コロナは国際社会と日本社会に大きな影響と様々な変化を、わずか数ヶ月間でもたらしました。来年はもっと様変わりしているかもしれません。

ところで私、車を“眺めている”のが好きで、自動車関連のWEBサイトをよく見ます。外見を眺めてるだけなんですが、今はどの車もカッコよくなりました。カローラ前モデルの姿かたちは個人的に今ひとつ疑問だったのですが、現行モデルはカッコいいです。

最近よくバブル時代の日本車を振り返るのですが、当時は辛口の評論家をよそに魅力的な車が多く現れた時代だと思います。(…当時から外見のみだったのですが)ユーノスロードスターやRX-7、個人的にコスモ。トヨタでは特に初代~2代目MR2や特異な車でSERA。スープラは昨年復活したモデルではFT-1から興味津々でした。三菱もGTOやランエボとバブル後もブイブイいわせていました。

今になって目を見張るのは日産。ナンパ車の代表シルビア、ドリフト代表180SX。バブリーなZ32は今や伝説的名車、デザインクオリティが高いです。GTR R32は世界に衝撃を与え今でも高値です。中でも私が興味深々なのは実はフィガロです。Be-1から始まる流れの1台。当時は「軽薄やっ!」で片づけていましたが、30年近く経た今となっては魅力的。最早、名車のひとつでいいのでは?

そしてその日産のロゴですが、先日変更になるという情報が耳に入りました。
昔、日産のブランドガイドラインを目にする機会があったのですが非常にカッコよかったです。日産の現VIは完成度が高いため、個人的にリニューアルへの期待があります。そこでこのトピックを取り上げ、ブランド体系など関連する内容へ進めようかと思いましたが、得られる情報が少ないのでまたの機会にしようと思います。

 

コーポレートアイデンティティを体現した企業ロゴ。提案されたデザイン案から最善の案を選出するポイント

そのため今回も引き続き、企業ロゴ・ブランドロゴの選考基準と、企業ロゴを選ぶポイントをテーマに致します。当テーマは今回で最後、「各ステークホルダー・顧客視点からの基準について」残りの2項目になります。

コーポレートアイデンティティを体現した企業ロゴ。提案されたデザイン案から最善の案を選出するポイント

 

シンボルロゴか、テキストロゴか。どちらが適してる?

企業ロゴは大まかに2つに分類できる。

前々回の記事、3の汎用性・展開性で先述した通り、当方では企業ロゴについて「シンボルロゴ」と「テキストロゴ」と、大まかに2つのパターンに分けています。

シンボルロゴは三井住友銀行のようにシンボルマークとロゴタイプの組合せで構成されたロゴ。テキストロゴはPanasonicのように文字で構成されているロゴです。

デザイナーがなぜこのようなことを考えるかというと、それぞれ機能的な特長があり、アイテムデザインにも大きく影響するからです。

以下、前々回記事の再掲です。

『シンボルロゴはシンボルマークに意味を凝縮します。そのため多くは存在感が強いデザインになります。また浸透すると記号として記憶され、遠距離からでも一発で識別されます。これらの強みから看板が店舗の目印になっている金融機関、また象徴として強く存在感を表現したい乗用車ブランド等でシンボルロゴが多い理由だと思います。

一方、その存在感の強さが製品デザインに干渉し扱いにくくなる事があります。家電ブランドにテキストロゴが多いのはその理由もあるでしょう。テキストロゴは象徴性や存在感が強くないため、アイテムやプロダクトデザインにおいては扱いやすいのです。』

シンボルロゴテキストロゴの事例

Wikipedia(https://ja.wikipedia.org)より転載

デザイン制作側では上記のような背景から、案件にある課題に応えるべく最適なパターンを選択します。カッコよけりゃ良い、オシャレな感じなら良いというわけではありません。認識や記憶のされ方、アイテムへのデザイン展開性などにおいて、戦略的な理由があります。

これらは当記事で取り上げる「視覚的記憶性」と「可読性」に関係します。

 

6:視覚的記憶性

視覚的に記憶しやすい。

視覚的に記憶されやすいのはシンボルロゴの方です。中でもシンプルな図形ほど読む以前にイメージが焼き付くように記憶されます。シンボルマークで表現する内容を絞り、無駄な形を極力省いたシンプルな図形が多いのは、その方が時間を要せず記憶に焼き付きやすいからと言えます。

東京都のシンボルマーク

Wikipedia(https://ja.wikipedia.org)より転載

シンボルロゴが社会に浸透すると造形品質の高いロゴは受け入れられ親しまれ、シンボルマークを一瞬見ただけで識別されるようになります。一瞬で識別されることはシンボルロゴの強みです。

例えば東京都のシンボルマーク。『東京都の頭文字「T」を中央に秘め、三つの同じ円弧で構成したものであり、色彩は鮮やかな緑色を基本とするものです。これからの東京都の躍動、繁栄、潤い、安らぎを表現したものです。(東京都のHPより)』
公募したとのことですが、レイ吉村さんという当時有名なデザイナーによるものです。てっきり都の木「イチョウ」をモチーフにしていると思いこんでいました。確認は大切。

頭文字ってのはシンボルマークのモチーフにしやすいです。昔、当方が若かった頃は「また頭文字ってのも安易さに逃げてるようでなんだかね。もっと自由に広がりのあるデザインをしたいんだよね~。」とか愚痴ってました。今は頭文字をモチーフにするのは社会が受け入れやすく、記憶性においても利点があると考えています。

東京都のように広範な産業に関与するケースでは、ここまでシンプルな図形だともう商標は取れないでしょう。三菱のシンボルマークもそうですが、社会も共有している永続的な財産と言っていいと思います。安易にリニューアルするなどしないで頂きたいと思います。

ところで販促物のロゴ等と違い、企業ロゴでは意味を多く持たせようと視覚的なポイントになる形を無闇に増やすことは避けた方がいいです。視点が分散して印象が曖昧になり、インパクトや記憶性が低下します。

意味の強い形を、複数合体させれば更に良いわけではありません。“アレもコレも”を抑制し、企業理念やビジョンなどコンセプトの本質を端的に表現します。形を削ぎながら意味を集中させます。そのためきっちり仕上がったシンボルマークの多くは、強い象徴性と存在感のあるデザインになります。

 

7:可読性

“読める”と記憶されやすい

当たり前かもしれませんが、テキストロゴの場合、まず難なく読めることが基本条件と考えて構いません。すぐに音読できることで記憶されるからです。

テキストロゴの事例

なんとなく文字に見えてしまうものって、思わず読もうとしていませんか?高度情報化社会の現代、周囲はとにかく“文字”だらけ。朝起きてから寝るまでひたすら言語に接しています。昔は今ほどではなかったように思います。文字など何かしら言語にしていないと「ボケ~っとしている!」などと言われ…愚痴ですかね。

ともあれ無意識的に読もうとした時に読めないとかなり記憶し難くなります。
直感的なビジュアルだけでなく、音声言語に変換されることでロゴにこめられた意味や連想が更に広がっていくと思いますが、その広がりがストップしてしまうのでしょう。理解が消化不良になるというか。

もし読めない場合、ロゴタイプなど読める文字がすぐ視認できるシステムを検討することになります。すぐには読めないロゴも戦略的にはありえます。

あるストリートファッションブランド(…Stüssy、ステューシーなんですが)、何しろグラフィティなので私には最初読めませんでした。街でよく見かけましたが、しばらくしてステューシーと認知した時点で記憶するスイッチが入り、メジャーブランドとして定着しました。

他の事例ではあるオーディオメーカーがあります。企業ロゴがそのまま製品ブランドとして使われる「マスターブランド戦略」というブランド体系です。私にはそのメーカー自体、既に親しみがありました。電車広告で企業ロゴをリニューアルしたことを知ったのですが、そのロゴデザイン自体はカッコいいものでした。

しかしテキストロゴなのにすぐに読めません。他に文字情報を探しますが、なかなか見つかりません。起死回生の施策だったと思いますが、社会におけるブランド認知に疑問がある中、おそらくブランド浸透に時間がかかるか、むしろマイナスかもしれないと思いました。

何でもデザイン優先、カッコよけりゃ読めなくても良いというわけにはいきません。

 

次回、は認識性と記憶されるロゴについて。

シンボルロゴもシンボルマークに平明なロゴタイプを組み合わせたシステムを成します。シンボルマーク単独表示もありますが、既にブランド浸透していることで可能になる戦略といえます。デザインはモチーフなど具体的に形がある何かや心にある抽象的イメージを形にしたものです。

ロゴの場合、抽象的なイメージは“意味”から、具体的なモチーフでは“文字”というパターンが多くなります。シンボルマークで頭文字が多用されるのはそのような理由もあるでしょう。

以上、企業ロゴの選考基準について第3回目でした。この話題については今回が最後になります。ロゴについてはお題がまだまだあり、奥が深いです。

感性的な側面(いわゆるセンス)、心理学的な側面、意味の概念化や脳科学的(?)な認知の考察、美術造形や錯視…考えを巡らせるほど、なんとも色々と深くなります。

「ロゴについてなんでそこまで考えんの?たかがロゴなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、つまりはそれだけ重要だからです。企業ロゴやブランドロゴには様々な立場の方が多数、関与します。

その皆様方の要望や不満、引っ掛かっている部分を理解し、丁寧に応えなければなりません。そうしないと後々、色々と面倒なことになります。で分析を重ね、色々と考え込んできた結果、こうなったわけです。

堅い内容が続いていますので、次は他社CI・VI事例でふと思った個人的な事を話題にしようかと考えています。

ところでワイルドスピードでは数々の日本車がハリウッドデビューしました。そんな魅力的なバブル以降の日本車ですが、映画「パシフィックリム」では芦田愛菜ちゃんと一緒に日産フィガロも出演しています。

実は個人的にハリウッドの怪獣映画には最大級の敬意をもっており、それもあってあのシーンはツボにはまり感涙モノでした。…もしフィガロを駐車場付きで譲って下さるという方は、ぜひお気軽にご連絡を。

 

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  • この記事を書いた人

イチロー

これまで広く業界を問わずCIとブランディングにおけるデザイン、またアイデンティティの創造・立案支援、クリエイティブ・デザインに関する講義等に従事してまいりました。 その間、私たちの社会環境や価値観はどんどん変貌し、今後もDX推進やVRなど新たなコミュニケーション手段により、戦略をはじめデザインする媒体も感性面も変わり続けます。その絶え間ない変遷の中、人の心にある普遍的価値にしっかり立脚し、目前に広がる社会の新たな展開と可能性を見据え、共助共栄の下、日々の業務に携わっていきたいと思います。

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